5月20日|「ガバメントAI「源内」」

2026年5月20日 研究会実施報告
「デジタル庁ガバメントAI『源内』の取り組み、今後の展開及び行革や業務改善がどう進むのか」
講師:デジタル庁 参事官補佐(AI実装戦略総括) 田中 俊充 氏
デジタル庁 今本 一輝 氏
講義テーマ:デジタル庁ガバメントAI「源内」の取り組み、今後の展開及び行革や業務改善がどう進むのか
本講義では、政府職員が安全・安心に生成AIを業務活用するための共通基盤「源内」と、それを起点に進む行政改革・業務改善の方向性についての講義を実施した。
1:開催概要
JGCIでは、デジタル庁 参事官補佐(AI実装戦略総括)の田中俊充氏と、デジタル庁の今本一輝氏を講師に迎え、「デジタル庁ガバメントAI『源内』の取り組み、今後の展開及び行革や業務改善がどう進むのか」をテーマに特別講義を実施しました。
本講義では、令和7年5月成立のAI法と2025年12月閣議決定の人工知能基本計画を背景に、政府職員のためのAI利用基盤「源内」の目的・機能・展開、そして行革・業務改善への具体的なインパクトについて学びました。
2:講義の主な内容
講義では、ガバメントAI「源内」の取り組みを次の5つの観点から整理しました。
(1)名称の由来とコンセプト
「源内」は、Generative AI の略「Gen AI(ゲンナイ)」と、江戸時代に西洋技術を主体的に取り入れた発明家・平賀源内(1728–1780)を重ね合わせた命名です。模倣ではなく批判的に取り込み社会に役立てる姿勢が、政府AIの設計思想として込められています。
(2)目的と政府方針における位置付け
源内は「政府職員が安全・安心にAIを業務活用できるための基盤」として、デジタル庁が整備するガバメントAIです。2025年12月23日閣議決定の「人工知能基本計画」では、政府・自治体でのAIの徹底活用が世界最先端AI技術の社会実装の起点とされ、源内はその中核施策に位置付けられています。
(3)提供される機能(2026年2月時点で20種類超)
汎用アプリでは、チャット、文書要約、日中英翻訳(PLaMo翻訳)、画像生成、議事録自動作成、大量テキスト分析などが利用可能です。
行政実務特化アプリでは、法制度調査AI(Lawsy)、国会答弁検索AI、公用文チェッカー、補助金審査支援AI(Grants)、物品管理(SEABIS)・電子決裁(EASY)のヘルプAI、パブコメ意見要約AI、答弁書作成支援AI などが提供されています。
(4)展開ロードマップと予算
2025年5月にデジタル庁内で先行運用を開始(約1,200人)。2026年1月から19省庁での試験的利用と、公募選定された7社の国産LLM試用が並行で進み、4月には源内の一部を商用利用可能なライセンスでOSS公開。2026年5月〜2027年3月は全府省庁約18万人を対象とした大規模実証期間で、本講義はその真っ只中の時期にあたります。整備事業の予算規模は令和7年度補正予算で44.0億円です。
(5)期待される行革・業務改善効果
具体例として、農林水産省の米生産意向調査で、職員一人あたり約2か月かかっていた分析作業が約3日に短縮(約95%短縮)された事例が紹介されました。国会答弁作成、許認可審査、資料分析、パブコメ処理、災害対処など、中央省庁の構造的課題に対する実装可能なソリューションとして示されています。

3:講義で示された重要な視点
今回特に重要だったのは、AIをツールとして既存業務に貼り付けるのではなく、AIを前提に業務そのものを設計し直す「業務+AI」から「AI+業務」への思考転換です。職員のスキル(個人のリテラシー)、各府省庁のガバナンス(組織の運用力)、共通基盤としての源内(インフラ)の三層が同時に整って初めて、本来の価値が引き出せると整理されました。
4:JGCIとしての学び
本講義は、ガバメントAIを業務効率化ツールとして見るのではなく、国家としてAIをどう導入し国民に価値として還元するかという「実装と統治」の枠組みを考える機会となりました。政府自らがAIの一次ユーザーとなり、安全・安心の標準を作り、国産AI・OSSを通じて民間に波及させていく構造は、AI国際競争が「モデル性能」から「実装力と統治力」へと軸足を移しつつある現状で、極めて示唆に富みます。
5:まとめ
今回の講義を通じて、ガバメントAI「源内」が、AI法の成立(令和7年5月)、人工知能基本計画の閣議決定(2025年12月)、全府省庁18万人を対象とする大規模実証(2026年5月〜)という三層の流れの中で、政府AI実装の中核として動き出していることを学びました。
JGCIでは今後も、AI技術の進化を社会実装・制度設計・人材育成の観点から捉え、ロボットと人間が幸せに共存する社会の実現に向けた研究と議論を深めてまいります。
